どうも、橋本です。
今日は少し真面目にコピーライティングについて。
チラシの見出しや商品のキャッチコピーを見て「たったそれだけ?」と驚かれる方は多いのではないでしょうか。実際、10文字前後のコピーは珍しくありません。たとえば、「そうだ。京都へ行こう」「決め手は、においでした」「免許がない、を超えてゆけ」といった短いことばです。どこかでみたことあるのではないでしょうか。
確かに、短いコピーは目を引きます。しかし、ただ短ければいいというものではありません。SNSでも「パッと目を引く短いことばを」という意識が広がっていますが、思いつきだけで作られたことばは読み手の心に深く残りません。
短いコピーが人の心に届く理由
短いコピーが届くのは、認知負荷が低く、脳が「理解しやすい=正しいかも」と感じる処理流暢性が働くからです。さらに、意味を圧縮して核だけを残すことで、読み手の記憶にひっかかるフックが生まれます。
「温度」「匂い」「音」などの五感語や具体名詞を使うと、読者は自分の経験と結びつけて脳内で情景を補完します。ここに“余白”が生まれ、読者自身の物語が流れ込む。
音の連なりも重要です。音数の少ない語、促音・撥音、同音反復はリズムを生み、口に出しても心地よく、想起されやすくなります。さらに、対比や小さなズレを入れると、認知のギャップが関与を促進します。
短いほど、一語一語の比重は重くなり、語尾・助詞・読点・改行の切り方までが“意味”になります。だからこそ、短さは削る勇気の技術であり、深さは現場で確かめ続ける態度なんです。
最後に、ことばは文脈で効き目が変わります。「誰に・どの場面で・どの媒体で」見るのかを一致させるほど、同じキャッチコピーでも効果はぐんっと跳ねます。
【事例】パン屋のポスターから学ぶキャッチコピーの作り方
以前、地元のパン屋さんのポスターを見ました。お店の売りは「焼きたての香り」と「毎朝4時から仕込む手間」。けれど、それをそのまま書いても人の心には響きません。
最初に「朝4時のまごころ」と考えてみましたが、しっくりこなかった。そこで何日か通い、実際にパンが焼ける瞬間を店の前で体験させてもらいました。寒い朝にふわっと広がるあの香りを感じ取ったとき、ようやく出てきたことばが「朝のにおいがする」でした。
匂いをことばにするのは難しいものです。しかし、形にできたとき、見えないものが届く感覚がありました。これが、短くても深く刺さるコピーのつくり方の一例です。
【キャッチコピーライティングのコツ】短さは技術、深さは姿勢
短くて深いコピーを書くために必要なのは「ちゃんと見る」ことです。調べることや分析より先に、対象をよく観察し、感じ取り、受け止める。そのうえで不要な部分を削っていくと、ことばは研ぎ澄まされていきます。
- 短さは技術:余計な装飾を削ぎ、核だけを残す編集力です。
- 深さは姿勢:対象に向き合う態度、観察と共感の積み重ねです。
コピーライターはこの二つを同時に持ち歩く仕事だと思います。見た目は「一撃」のように見える短いコピーも、裏側には何層もの観察と感情の堆積があります。だからこそ、たった一言が心に届きます。
【今すぐ使えるチェックリスト】~キャッチコピーの作り方・実践編~
- 対象を観察する:五感のメモ(見た目・音・温度・匂い・触感)を書き出します。
- 核を一言で言う:商品・サービスの「体験の核心」を10~12文字で要約します。
- 比喩で見えないものを可視化:匂い・空気感・時間帯など抽象を具体に落とします。
- 言い切る:助詞や接続を削り、主語・述語で断定します。
- 声に出して読む:リズムが悪ければ文字数や語尾を調整します。
- 現場で再検証する:実際の売場・時間・文脈で読み直し、違和感を修正します。
【まとめ】「短く、しかし、より深く」
「短く、しかし、より深く」。一見すると矛盾するようですが、この姿勢こそがことばの魔法を生み出します。短いコピーだからこそ、深さが必要です。まずは「よく見る」ことから始めてください。観察と体験の積み重ねが、ことばの厚みを生み、心に残るキャッチコピーへとつながります。